上橋菜穂子『獣の奏者』

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上橋菜穂子さんの作品のタイトルはどことなく自分には取っ付きづらい。でも前回守り人シリーズでその世界にズッポリと引きずり込まれた作家だ。少年少女用の作品と侮ってはいけない。作家自身もこの作品は大人にも読ませるものとして書いたとあるじゃないか。

物語は戦用に飼われる巨大な王獣と闘蛇と、それらを普通の生き物として愛情を持って育てた女性エリンの物語。

読み始めると、闘蛇ってどんな生き物?と早速食いついてしまった。漢字の表す通り武器として闘わせる蛇。角があって足があるのだから竜のような生き物なのかもしれない。もっとも本物の竜を見たことがないのだからこちらもそれに似ているなどとは言えないが。王獣とはきっと鷹や鷲のような精悍な鳥なのだろう。どちらも巨大でかまれれば人間の胴体も簡単に食いちぎられる。

他国には持てないこれらの武器を持つ国の内情。周りの国々との関係。いろいろな思惑が絡み合うところが大人向きなのだろう。いわゆる一部の大人の事情(都合)のような。

最後には読み手によっては課題が残ったと感じるかもしれない。

それにしても上橋菜穂子さんの文章は素敵だ。仕草がごく自然な描写で書かれているのですぐ目に浮かぶ。すぐに物語の世界に入れるのもそのせいかもしれない。ともかくまだ読んだことのない人は一度現実的な世界から離れこういった物語の世界を訪れてみてはいかがだろう。

まだまだいろいろ読んでみたい作家である。

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