それにしても石田衣良さんは、女性の心理を上手に書くものだ。とは言っても自分は女性ではないので本当にそうなのかはわからない。だが、妙に納得させられるのだ。
海外に赴任してしまったおじさんが持つ恵比寿の高級マンションを借りることになった29歳の智花(ともか)は、先輩、友達、そして後輩の女性3人シェアして暮らしている。4人とも仕事は充実しているのだが、なかなかいい男性に巡り合わない。ほぼ毎週合コンを繰り返す。
先輩沙都子は今年32歳。バツイチで35歳までに子供を作りたいのでもう時間がないとお見合いパーティにも参加する。
このくだりの中で主催者である沙都子の友達が、ため息をついた後の実情というのがなんとも切ない。
それは、
近年だんだん婚活パーティやお見合いパーティも周知されて登録者は多くなってきているが、実際に結婚に至る人が非常に少ないということだ。その原因は男性に勇気がなくて電話やメールで誘えないこと。最近は働く女性も多いので都合がつかない場合も多いのだが、一回都合がつかないという断りで心が折れてあきらめてしまうことが多いらしい。そしてもう一つの原因はいつの時代でも女性は男性に発見されたいと思っていること。非常に興味のある話だ。
草食系男子という言葉がなんの疑問符もつかないくらい普通の状況になってしまった今日、誘えない男性と誘いを待つ女性。一体これで結びつきができるものなのだろうか。
先日、30代後半の働き盛りの男性が、長年同棲している女性に勇気を振り絞って求婚したら断られてしまったそうだ。気働きのきく好青年なのになぜだかわからない。写真に写る彼女は確かにどちらかと言えばキレイ系。そんな彼女は駅から1分で便のいい彼のマンションに依然同居を続けているという。「こんなきれいな子なら出て行けとは言えないのも仕方ないね」と同情するものの、なんとも不甲斐ない。昔、都合のいい男性を揶揄してアッシー君とかメッシー君などという言葉があったのをふと思い出した。彼女は彼をなんと心の中で呼んでいるのだろうか。ま、しかし、二人のことは二人にしかわからない。ただただ彼が幸せになることを祈るのみだ。
男性は歳を重ねるにつれて若さを求める傾向が強いそうだが、女性の場合は日増しに相手に求める条件が増えるらしい。ここまで結婚しなかったんだから、もっと好条件の人でないと周りからどう思われるかわからないといった見栄が働くらしい。だから若い時ならルックスにだけこだわった人も、それに加えて収入が多い人とか、財産がある人とかが加わってくる。よく若い芸能人が「優しい人」なんていうのは、あくまでも公式発表だ。たぶんに本音ではない。いや、ちょっと言い過ぎか?「優しさ」は当然必要な物ということなのかもしれない。この物語では、三十路を目の前にした主人公はセックスの相性も重視した。自分が百点満点ならいざしらず、そうでないのに高望みをする。
これからは、さらに女性が活躍する時代になるだろう。もう何年も前から女性が大枚をはたいてホストと遊ぶクラブもあるくらいだ。
女性が外で働き男が家で家事をする。土産を片手に千鳥足で帰ってきた妻に「外で食べてくるなら電話くらいちょうだいよ」なんて夫が金切り声を上げる時代も遠くないはずだ。そうなれば女性も男性の地位や資産よりも、疲れて帰る自分をいかに癒してくれるかどうかという点が大きなポイントになるかもしれない。
そう、結婚を望む男性諸氏は、この本の中でも出てきたが、さして大した功績でもないことを自慢するのはやめにすることから始める必要がありそうだ。
これから結婚をしたいと考えている方にはオススメ。